電脳文芸日記 4
佐伯一麦さん、森下一仁さんのご協力を得て、文藝ネットも本格始動に向けてじわじわと形ができてきました。
何事も、初めての試みというのは大変です。デジタル配信にしても、どういう形式がいちばんいいのか、悩むところです。
QTViewが待望の暗号化機能を持つようになりました。これを書いている2000年3月21日現在、まだ正式発表はされていませんが、すでにβ版を試してみました。理想通りのものになり、感激しています。
これにより、長文のデジタル配信はQTView版とPDF版に絞ることに決めました。
縦書きHTML版は短文に限り、アプレットではなく、直接作成方式を採用していこうかと思います。サンプルはすでに「
自由図書館」にあります。
日本推理作家協会の会報3月号に、日本推理作家協会電子メディア委員会・通信ネット委員会の名で、「電子書籍の販売・配布はテキストファイルによってなされるべきではない」という見解が掲載されました。コピーが容易なテキストファイルで文芸作品を配布するのは作家にとって自殺行為であり、協会としては容認できないという主張です。
非常に難しい問題だけに、各作家も悩んでいるところでしょう。
HTMLも、タグを除去すればプレーンテキストになりますから、一種のテキストファイル配信であると言えます。つまりは、現在、
ホームページを持ち、自分の作品を掲示している作家はすべて、実質的にはテキストファイルによる作品配信をしているのと同じことになります。
JAVAアプレットを使ってテキストを読み込み、縦書き表示させるページなどは、読み込むファイルがテキストそのものですから、まさに「テキスト配信」ということになります。
これに対して、文藝ネットの自由図書館に掲示したような疑似縦書きHTML方式ですと、ソースファイルから直接オリジナルの作品ファイルを得ることはかなり難しくなります(もちろん、このファイルを作成したのと逆のことをすればいいだけですから、プログラミングの知識がある人には容易なことでしょうが)。
一方で、「インターネット上の文書は万人が自由に読めるのが利点なのだから、このように縦書き方式のみで作品を発表するのは誉められた行為ではない」という意見もあります。通常の文書なら音声読み上げソフトを使えば視覚障害者にも読めるのに、そのチャンスを奪っているというわけです。
インターネット等の通信手段を介して文芸作品を掲示・配信する場合、
- フリーテキストにする(もちろん著作権は主張し、再配布などは禁止する)。
- 縦書き表示にして、文芸独自の主張をすると同時に、テキスト抽出を困難にさせる。
- 編集不可のガードをかけたファイル形式(PDF、暗号化QTViewなど)で掲示・配布する。
という3段階くらいがあるわけです。
デジタル配信というのは、試食品の展示や無人売店のようなものでしょう。客の常識や善意を信用した上での行為です。テキストファイルで配布した場合は、無人売店の商品や陳列した試食品を盗まれて他で売られてしまうかもしれないという危険が伴うわけですが、いずれにせよ、作品をどういう形で読んでもらうかは、作家個人に委ねられるべきでしょう。善意に委ねた結果、無人商店の商品を盗まれ、他で売られてしまったとしても、責められるべきなのは商品を置いた人ではなく、盗んだ人であることは言うまでもありません。
(00/03/21 鐸木能光・記)
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